原稿を依頼されるときに、原稿料を示されないことが多い。編集者から示されるのは、原稿の内容と締め切りだけである。聞くと答えてくれることもあるが、まだ決まってないので・・・といわれることもある。私は、新人時代から不思議で仕方がなかった。
これは、日本のライター業界全体に広がっている一種の"慣習"だそうだ。「原稿料で仕事を選ぶなんて」ということらしい。
現役を退いた女性編集者に聞いたところ、「外注ライターをいかに安く使うかが、編集者の腕の見せ所みたいなところがあって、足元を見ながら金額を決めるのよ。最初に5万と示しておいて、経費が思ったよりもかかったので4万でとお願いするのは、はじめから決まっているストーリーなのよ」と言う。こんなとんでもないクライアントばかりではないが、私も以前、20万でと依頼された仕事が「経費がかかったので」と請求時に16万円に値切られたことがある。それ以来、金額の示し方が曖昧な会社の仕事は受けないようにしている。
ライターは、「依頼された仕事を断らない」「金額で仕事を選ばない」という傾向がある。「金額はともかく、どんな仕事も断らないで、完璧にこなすのがプロの仕事」と胸を張る。「原稿料で仕事を差別するなんて、私にはできません」と首を横に振る。文化的創造的な仕事を報酬が少ないからと差別するのは卑しい・・・・・・ということらしい。
しかし、私は、プロだからこそ、「仕事の報酬」にこだわるべきだと考えている。それぞれの仕事に見合った報酬を要求すべきだし、用意されるべきだと思う。プロならば、自分の技術を安売りしてはいけないのである。